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この記事は2021年1月23日にElenaの母が書きました。
「ラ・クカラチャ」を偶然耳にした日
日曜日、善通寺の大西忠夫記念館へ工芸美術四国会展を見に行った帰り、栗林町のスーパーへ寄った。
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店内にはおなじみの
マルナカのテーマソングが
エンドレスに流れている。
聞き流していればいいのだが、それでも歌詞は否応なしに耳に入ってくる。
そんな中、野菜コーナーの付近で微かに違うメロディーが聞こえてきた。
ラ ラララ~ラ、 ラ ラララ~ラ、 ラ~ラ ララ ラララ~ラ
(おや?このメロディーは・・・・)
そうだ、あの曲だ! 1970年、メキシコで聞いたLa cucaracha(ラ・クカラチャ)だ!
歌詞のサビの部分を思い出した。
♪La cucaracha, La cucaracha, Ya no puede caminar♪ ラ・クカラチャ、ラ・クカラチャ、 ヤ ノ プエデ カミナル (ゴキブリ、ゴキブリは もう歩けない) | ![]() ![]() |
「ラ・クカラチャ」とは?
そう、La cucarachaとは、ゴキブリのことである!でも何故、ゴキブリなのか?
1910年から10年近く続いたメキシコ革命に従軍した兵や、同行した妻たちの事を揶揄しているというが・・・
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メキシコ革命と「ラ・クカラチャ」の関係
この歌は元々スペインから持ち込まれたメキシコの古い民謡だそうだ。革命軍の兵士たちの間で歌われていたのは、「もう歩けない、だって吸うマリファナが残ってないから」という危ない内容や、敵対する将軍の名前や地名を織り込んだ替え歌で、メキシコの少しコミカルな歌として定着したらしい。
映画で描かれたメキシコ革命
革命を扱った映画もある。
※メキシコ革命の革命軍の主要人物エミリアーノ・サパタ・サラサールと、パンチョ・ビリャ
出典Wikipedia
- 『奇傑パンチョ』(1934) 監督:ジャック・コンウェイ、ハワード・ホークス 出演:ウォーレス・ビアリー、レオ・キャリロ、フェイ・レイ 脚本:ベン・ヘクト
- 『戦うパンチョ・ビラ』(1968) 監督:バズ・キューリック 出演:ユル・ブリンナー、ロバート・ミッチャム、チャールズ・ブロンソン 脚本:サム・ペキンパー
- 『革命児サパタ』(1952年)エリア・カザン監督。出演、マーロン・ブランド、アンソニー・クイン。脚本、ジョン・スタインベック
- 名匠ルイ・マル監督がフランス映画界を代表する二大女優ジャンヌ・モロー, ブリジット・バルドーを起用したコメディ「VIVA MARIA !」(1965) も、メキシコ 革命の動乱期を舞台にしている
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『ラ・クカラチャ』歌詞の意味
※La cucarachaの歌詞は次の通り
Una cosa me da risa Pancho Villa sin camisa Ya se van los carrancistas Porque vienen los villistas La cucaracha, la cucaracha, Ya no puede caminar; Porque no tiene, porque le falta Marihuana que fumar | おれを笑わせるのは、シャツを着てないパンチョ・ビリャ カランサ軍の連中は逃げていった ビリャの軍勢がやってきたから ラ・クカラチャ ラ・クカラチャ ゴキブリはもう歩けない だってもうないのだから、だって切れてしまったから 吸えるマリファナが |
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Para sarapes, Saltillo Para soldos, Chihua Para mujeres,Jalisco Para amar toditos Lados La cucaracha, la cucaracha, Ya no puede caminar; Porque no tiene, porque le falta Marihuana que fumar | サラぺが欲しけりゃサルティーヨに 兵士が欲しけりゃチワワに行け 女が欲しいやつぁハリスコだ 愛がほしけりゃどこへでも行け ラ・クカラチャ ラ・クカラチャ ゴキブリはもう歩けない だってもうないのだから、だって切れてしまったから 吸えるマリファナが |
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子供向けの歌では、蟻の巣穴に突っ込んだ足を、お腹を空かせた蟻に食べられちゃったから、もうゴキブリは歩けないよというようなコミカルなゴキブリそのものの歌詞もある。
『ラ・クカラチャ』の歌詞には色々なバージョンもある
メキシコ民謡として歌い継がれているこの歌は、吸うマリファナが足りないという不穏な歌詞の所為か、革命軍とは無縁の内容に変わったバージョンも見られる。様々な国の言葉で歌われているが、サビの部分のLa cucaracha, La cucarachaは変わらない。
マリアッチ演奏によるテンポの良いこの曲はダンス音楽にもなっている。
日本の学校でも、メキシコ民謡「ラ・クカラチャ(車にゆられて)」として歌われていると知った。
車にゆられて野良仕事に出掛けて行くという、ゴキブリとは関係のない牧歌的な歌詞になっているが、やはり、♪ラ クカラーチャ、ラ クカラーチャ♪と、何度もリフレインしている。
歌っている子供たちは、ラ・クカラチャがゴキブリのことだと知ってはいまい。
歌詞の内容はどうであれ、自然と体が動き出す軽快なリズムは、一度聞いたら忘れられないだろう。この私がそうであるように!
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ゴキブリにまつわるメキシコでの経験
1970年と言えば、日本では大阪万博が開かれた年だ。当時の日本の家庭では、ゴキブリを見かける事は当たり前であったのではないだろうか。
「生きている化石」とさえ言われ繁殖力に富む彼らは、見るからに不浄極まりなく、誰からも忌み嫌われているはずだ。
ところが、メキシコでは私が思う程に人々はゴキブリに過敏ではなかった。
当初、事情の分からない私達は紹介された便利な地区にあるアパート(日本の団地のようなところ)に住んでいた。冬が過ぎ暖かくなるに連れ、ゴキブリの姿が見え隠れし始めた。
彼らは家の中に潜んでいるだけかと思いきや、行列を成して移動するのである。子供の頃から蟻の行列は幾度となく目にしてきた。一生懸命働いているんだなと微笑ましく思えたものだ。
だが、夕方、塀で囲まれた敷地の入口の門扉をくぐってアパートの方へと向かうゴキブリの“行進”を目にした時には、驚きを通り越して恐怖を覚えた。
あの“隊列”はどの棟に潜り込んだのだろう?想像するだけで身震いを覚えた。この行列を見かけた後、私たちは閑静な地区の新築のマンションに急遽引っ越した。
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その後、メキシコに長く住んでいる日本人夫婦に、この「事件」のことを話すと、
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この国にはゴキブリの歌があるくらいだから
と笑われた。
そこで、ゴキブリの歌、La cucarachaを知ったのである。
(ゴキブリの歌?)
と訝しんだが、これが実に楽しい曲だった!
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それから帰国まで1年足らずの間、幸いにも、本物のcucarachaに出会う事は無かった。
半世紀前の事を思い出させてくれたこの曲をYou tubeで聴いてみた。スペイン語だけでなく、英語、フランス語、ロシア語版もあった。勿論、日本語の歌も聴いてみた。
同じ言語でも幾つも違った歌詞が有って、この曲が本当に世界の人々に親しまれていることが分かった。歌詞は違っても、意味が分からなくても、とにかく楽しい。
偶然は必然と言われるが・・・?
それにしても、偶然というのは面白い。
あの日、あの店に寄らなければ、野菜コーナーに行かなければ、この曲に出会うこともなかった。
この曲を聞かなければ、こんなに深堀りすることもなかったろう。
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ゴキブリの行列のことも思い出すことはなかった!
後日、同じ時刻に同じ店に寄ってみたが、いつものテーマソングしか流れていなかった。
後期高齢者と呼ばれるずっと以前から、自分でも呆れる程、大呆け、小呆けを繰り返している。
最近は、人の名前、物の名前がとんと思い出せなくなっている。もう、病気は静かに進行していると思われるのに、「アルツハイマーになったらどうしよう」などと、未だに戯言を言っている。腹が据わっていない。
笑止千万!この曲を聴いて、メヒカーノやメヒカーナのように明日を思い煩うことなく、ケ・セラ・セラと生きて行けという啓示であろうか?はたまた、呆けの進行を遅らせる為にスペイン語の学習でも始めてはどうか?という暗示なのだろうか?